海辺に駐車した軽自動車

コラム

軽自動車の「ハイブリッド」はなぜ燃費が悪い?実は普通車の「ハイブリッド」とは別物

「軽自動車にもハイブリッドがあるんだ」と知って調べてみたら、思ったほど燃費が良くない――そんな疑問を抱いた方は少なくないはずです。プリウスやヤリスといった普通車のハイブリッドがガソリン車の1.5倍〜2倍もの燃費をたたき出す一方で、軽自動車のハイブリッドはガソリン車と比べてせいぜい5〜10%程度の燃費向上にとどまるケースがほとんどです。

この差が生まれる最大の理由は、軽自動車と普通車ではそもそも搭載しているハイブリッドシステムの種類がまったく違うからです。普通車に多い「ストロングハイブリッド」と、軽自動車で主流の「マイルドハイブリッド」は、同じ「ハイブリッド」と名前がついていても仕組みも効果もまるで別物。名前だけで比較すると、肩透かしを食らうのも無理はありません。

この記事では、軽自動車のハイブリッドがなぜ「燃費が悪い」と感じられるのか、普通車のハイブリッドとの違いは何なのか、そして軽自動車のマイルドハイブリッドにはどんなメリットがあるのかを具体的な数値とともに整理していきます。

そもそもハイブリッドには「2種類」ある

ハイブリッド車はエンジンとモーターを組み合わせた車ですが、実はひとくちに「ハイブリッド」と言っても、モーターの役割やバッテリーの大きさによって性格が大きく異なります。現在市販されているハイブリッド車は、大きく分けて「ストロングハイブリッド(フルハイブリッド)」と「マイルドハイブリッド」の2つに分類できます。

ストロングハイブリッド(フルハイブリッド)とは

ストロングハイブリッドは、高出力のモーターと大容量のバッテリーを搭載し、モーターだけでもある程度の距離を走行できるハイブリッドシステムです。トヨタのTHS-IIに代表されるこの方式は、エンジンとモーターを走行状況に応じて使い分けたり、同時に使ったりすることで高い燃費性能を実現します。

駆動用バッテリーの電圧は200V以上で、プリウスではさらに最大650Vまで昇圧して使用しています。バッテリー容量が大きいため、低速域や渋滞時にエンジンを停止してモーターだけで走る「EV走行」が可能で、この仕組みが大幅な燃費向上につながっています。

マイルドハイブリッドとは

マイルドハイブリッドは、エンジンが主役で、モーターはあくまで補助的に使う簡易的なハイブリッドシステムです。もともとエンジンに付いている発電機(オルタネーター)を強化して、発電だけでなくエンジンのアシストも行えるようにしたISG(モーター機能付き発電機)を搭載しています。

バッテリー電圧は12Vが主流で、ストロングハイブリッドの200V以上とは桁違いに小さいシステムです。基本的にモーターだけで走行することはできず(一部車種で極低速時に数秒〜10秒程度のクリープ走行が可能)、減速時のエネルギー回収と発進時のアシストがおもな役割です。

軽自動車のハイブリッドは「マイルド」が主流

現在、軽自動車に搭載されているハイブリッドシステムは、ほぼすべてがマイルドハイブリッドです。スズキの「マイルドハイブリッド」、日産の「スマートシンプルハイブリッド(S-HYBRID)」など、メーカーごとに呼び名は異なりますが、仕組みは基本的に同じカテゴリーに属します。

では、なぜ軽自動車にはストロングハイブリッドが採用されないのでしょうか。その理由は大きく3つあります。

  • ストロングハイブリッドの高出力モーターや大容量バッテリーを搭載すると車両重量が大幅に増加し、軽自動車の軽さという利点が失われてしまう
  • システムが複雑で製造コストが高く、軽自動車の「低価格」というセールスポイントと相反する
  • 軽自動車はもともと車体が軽く燃費が良いため、大がかりなシステムを積んでも費用対効果が見合わない

軽自動車は車両本体価格の安さが大きな魅力です。ストロングハイブリッドを搭載して車両価格が30万円以上高くなってしまえば、燃費で元を取るのは極めて難しくなります。マイルドハイブリッドなら、ガソリン車との価格差を10万円前後に抑えられるため、軽自動車との相性が良いのです。

燃費向上率が全然違う — 数字で見る差

ストロングハイブリッドとマイルドハイブリッドでは、ガソリン車に対する燃費の向上幅にどれほどの差があるのか、具体的な数値を見てみましょう。以下は代表的な車種のWLTCモード燃費を比較したものです。

車種 ハイブリッドの種類 ガソリン車の燃費 ハイブリッド車の燃費 燃費向上率
トヨタ ヤリス ストロング 21.6km/L 36.0km/L 約67%
トヨタ プリウス(1.8L) ストロング —(HV専用車) 32.6km/L
トヨタ シエンタ ストロング 18.3km/L 28.8km/L 約57%
スズキ アルト マイルド 25.2km/L 27.7km/L 約10%
スズキ ワゴンR マイルド 24.4km/L 25.2km/L 約3%
スズキ スペーシア マイルド —(全車HV) 25.1km/L

ヤリスのストロングハイブリッドがガソリン車の約1.7倍の燃費を実現しているのに対し、アルトのマイルドハイブリッドは約10%の向上、ワゴンRに至っては約3%にとどまっています。Wikipediaの記載によれば、トヨタのフルハイブリッドシステム(THS)による燃費向上率は67%〜99%に達するのに対し、スズキのマイルドハイブリッド(12Vシステム)では3%程度という報告もあります。

つまり、「ハイブリッド」と名がついていても、軽自動車と普通車では燃費向上の恩恵がまったく異なるレベルにあるということです。

なぜマイルドハイブリッドは燃費がそれほど伸びないのか

マイルドハイブリッドの燃費向上効果が限定的な理由は、システムの根本的な違いに起因します。

モーターだけで走れない

ストロングハイブリッドは低速域でエンジンを完全に停止し、モーターだけで走行できます。とくに渋滞や市街地走行では、エンジンを使わない時間が長いほど燃料を節約できます。一方、マイルドハイブリッドはモーターの出力が小さく、基本的にエンジンが常に回っている状態です。モーターはあくまで「アシスト」であり、エンジンを止めてモーターだけで走り続けることはできません。

バッテリー容量が小さい

ストロングハイブリッドでは200V以上の高電圧バッテリーを搭載しますが、軽自動車のマイルドハイブリッドは12Vの小型バッテリーです。蓄えられるエネルギー量が圧倒的に少ないため、回生ブレーキで回収したエネルギーもすぐに使い切ってしまいます。

そもそも軽自動車は「ベースの燃費が良い」

軽自動車は車両重量が700〜1,000kg程度と軽く、排気量も660ccに制限されています。もともとエネルギー効率が高いため、ハイブリッド化による改善の余地が普通車ほど大きくありません。普通車は1,200kg〜1,800kg程度あり、排気量も大きいためエネルギーのロスが多い分、ハイブリッド化の恩恵が大きく出やすいのです。

スズキ ソリオで見る「3段階比較」

マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドの差を同一車種内で比較できる珍しい例が、スズキのソリオです。ソリオには同じ1.2Lエンジンを搭載するガソリン車、マイルドハイブリッド車、ストロングハイブリッド車の3タイプが用意されています。

パワートレイン WLTCモード燃費(2WD) ガソリン車比の向上幅
ガソリン車 19.0km/L
マイルドハイブリッド 19.6km/L +0.6km/L(約3%)
ストロングハイブリッド 22.3km/L +3.3km/L(約17%)

マイルドハイブリッドはガソリン車に対してわずか0.6km/Lしか燃費が向上していません。一方、ストロングハイブリッドは3.3km/Lの向上で、明確な差が出ています。同じ車種・同じエンジンでこの差が出るのですから、システムの違いがいかに大きいかがわかります。

それでも軽自動車のマイルドハイブリッドにメリットはある

ここまで読むと「マイルドハイブリッドは意味がない」と思えるかもしれませんが、軽自動車に搭載する上では、それなりの合理的なメリットがあります。

車両価格の上昇が小さい

マイルドハイブリッドはシステムが簡易的なため、ガソリン車との価格差が小さく抑えられます。たとえばスズキ アルトの場合、ガソリン車とマイルドハイブリッド車の価格差は約10万円です。ストロングハイブリッドで30万円以上の価格差が生じる普通車と比べれば、かなり手ごろです。

発進時のスムーズさが向上する

排気量660ccの軽自動車は、発進時のトルクがどうしても細くなりがちです。マイルドハイブリッドのモーターが発進時にアシストすることで、出だしのもたつきが軽減されます。とくに坂道発進や、荷物を積んだ状態での発進では体感的な差を感じやすいポイントです。

アイドリングストップからの復帰が静か

マイルドハイブリッドのISGは、アイドリングストップ後のエンジン再始動を通常のセルモーターよりも静かかつスムーズに行えます。従来のアイドリングストップで感じていた「ブルッ」という振動や騒音が大幅に抑えられ、快適性が向上します。

車重がほとんど増えない

独立した大型モーターや大容量バッテリーを搭載するストロングハイブリッドに比べ、マイルドハイブリッドのシステムは軽量・コンパクトです。車両重量の増加が最小限で済むため、軽自動車の取り回しの良さを損ないません。

軽自動車のハイブリッドを選ぶ際に注意したいこと

燃費だけで元を取るのは時間がかかる

スズキ ワゴンRの場合、ガソリン車とマイルドハイブリッド車の車両本体価格差は約17万円です。市街地走行中心でも、ガソリン代だけでこの差額を回収するには年間17,000km以上走行する必要があるという試算もあります。年間走行距離が少ない方は、ガソリン車のほうがトータルコストで有利になるケースも少なくありません。

冬場はアシスト効果が落ちる

マイルドハイブリッドの小型リチウムイオンバッテリーは、低温環境に弱い傾向があります。ユーザーの報告では、外気温が4℃以下になるとモーターアシストがほとんど機能しなくなるケースも確認されています。寒冷地にお住まいの方は、冬場の燃費悪化を見込んでおく必要があるでしょう。

「ハイブリッド」の名前に期待しすぎない

カーディーラーや中古車販売店では「ハイブリッド」をアピールポイントとして前面に出すことが多いですが、軽自動車のマイルドハイブリッドは普通車のストロングハイブリッドとは根本的に別物です。「プリウスのようにガソリン代が半分になる」という期待で購入すると、ギャップを感じることになるため注意が必要です。

今後の軽自動車のハイブリッドはどうなる?

2030年度の新たな燃費基準では、軽自動車にも一段と厳しい数値が求められます。現状のマイルドハイブリッドではこの基準をクリアするのが難しい車種もあり、たとえばスズキ ハスラーは燃費数値をさらに14%向上させなければ基準を達成できないとの指摘もあります。

こうした背景から、今後は軽自動車にもストロングハイブリッドの搭載が進む可能性があります。実際に日産は軽自動車用のe-POWERシステムの開発を示唆しており、三菱はeKクロスEVで軽自動車の電気自動車をすでに市販しています。

政府は2035年までにエンジン車の新車販売を禁止する方針を示しており、マイルドハイブリッドも「電動車」の一部として認められる見込みですが、燃費基準の厳格化とともに、軽自動車のハイブリッドシステムも今後は大きく変わっていくと考えられます。

まとめ — 軽自動車のハイブリッドは「割り切り」で選ぶ

軽自動車のマイルドハイブリッドと普通車のストロングハイブリッドは、同じ「ハイブリッド」でもまったく別物です。両者の違いをあらためて整理します。

比較項目 マイルドハイブリッド(軽自動車) ストロングハイブリッド(普通車)
モーターのみの走行 基本的に不可(一部極低速のみ可) 可能(低速域〜中速域)
バッテリー電圧 12V 200V以上
燃費向上率 3〜10%程度 50〜100%程度
ガソリン車との価格差 5〜17万円程度 30万円以上
車両重量への影響 ほぼなし 100kg前後の増加
システムの複雑さ シンプル 複雑

軽自動車のマイルドハイブリッドは、「劇的な低燃費」を求めるものではなく、低コストで少しでも燃費を良くし、発進のスムーズさや静粛性を改善するための技術です。そう割り切って捉えれば、マイルドハイブリッドは軽自動車に合理的に溶け込んだ実用的な装備と言えます。

大切なのは、「ハイブリッド」という名前のイメージに惑わされず、自分の使い方に合った選択をすることです。年間走行距離が長い方であれば燃料費のメリットを感じやすいですし、市街地での発進が多い方はモーターアシストの恩恵を受けやすいでしょう。逆に、走行距離が短く、車両価格を少しでも抑えたい方は、ガソリン車を選んだほうがトータルではお得になることもあります。

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